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2012.11.30 - 12.9
原芳市 Hara yoshiichi

常世の虫 II

35mm モノクロ 10×12in. 28枚
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645年、誰でも知っている大化の改新の年。その一年前に、「常世の虫」という日本史上初といわれた、宗教弾圧事件が起きたのです。

今の静岡県に大生部多(おおふべのおお)という男が、アゲハチョウの幼虫を奉り、拝み踊れば、富と長寿を得ることができるというものでした。それは、人々に受け入られ、急速に勢力を増していったといいます。

「常世の虫」を奉る教団を危惧した、葛野の秦河勝(はたのかわかつ)が、それを弾圧し、鎮圧したというのです。ぼくは、この事件を、不思議な思いで読みました。ただ単なる宗教弾圧事件ではないような気がしていたのでした。

大生部多の裏には、蘇我入鹿が存在していたのではないか、などとも想像してしまいました。そして、「その長さ四寸余その大きさ頭指許の如し。その色、緑にして黒点あり、その貌、全養蚕に似たり…」という『日本書紀』に記された虫に魅了されてしまいました。

15年もの長い間、その虫は、ぼくの頭の中で生き、夏になると、その虫が、蠢いて語るのでした。そして、虫たちの夏を、過すのでした。


原芳市

 

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