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2014.6.17 - 7.2 福岡 1995,1999 6×4.5判 モノクロ 11×14in. 23枚
今回の写真は、実家がある福岡県古賀市を起点に、私が中学を卒業するまで住んでいた福岡市内と、縁のある久留米、柳川、大牟田、篠栗、野方、飯塚、北九州、門司などを、1995年と1999年に帰省した折に撮影したものです。 動機は、撮影の初動が早かったことを記憶しているので、'94年か'95年に里帰りした際、昔住んでいた家がどう成っているのかと訪ねたときに、もはや何処にどのように建っていたのかすら分からないどころか、道脈も変わり果て、本当にここに在ったのかと自信もなく途方に暮れ、この先もいろんなものが無くなるかもしれない、撮っておかないと、という取り返しのつかなさの様な、半ば強迫観念に似た衝動からでした。 当時の写真を見返してみると、その時にあった情緒の様なものから、「撮っておかないと」という“記録性”とは遠くにある距離感は否めませんが、低感度フィルムを装填した中判カメラを三脚にすえた視線と、現在、継続的に撮っている35mmレンジファインダーカメラを手に持ったときの視線の違いに、写真の奥行きといいますか、横の振り幅を改めて感じることができました。 プリントは、いわゆる “vintage” で、'99年に新宿と大阪のコニカプラザで「帰去来」と題して展示したものです。柳川の写真が多くあったことでか、当時の写真展評には北原白秋のそれや陶淵明(とうえんめい) の「歸去來兮(かへりなん いざ)〜」を引き合いにとても良く書いていただいたのですが、本当は太宰治の小説のタイトルから拝借。北原白秋の『帰去来』や陶淵明のことなどまったく知りませんでした。 印画紙は、今は“亡き”コダックの『Ektalure』。同じコダックの『Elite』とともに私が愛した印画紙です。'99年は製造終了の年で、新宿のヨドバシカメラで仲が良かった店員さんに、全国の棚からかき集めてもらった最後のエクタルアです。今から見たら、かなり下手っぴなプリントですが、お時間があれば見ていただきたい。膜面が絶妙に美しいのです。 そうして改めて、無くなるのかもしれないと思いながら撮った福岡の写真を見返していく内に、既に、或はこれからも変わっていくだろう福岡も撮ってみたいという衝動がちょっとだけ立ち上がりました。
牟田義仁
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