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2014.3.11 - 3.19
那須悠介 Nasu yusuke

植物の名前

35mm モノクロ 11x14in. 25枚
なすゆうすけ・略歴 >>


 

誰しも、というわけではないだろうけど、血縁の者を見渡してみれば、現在や過去に一人ぐらいは、異端者とでも称される人物がいるのではないだろうか。

私にとってその人物は、父の母の父、すなわち曾祖父である。生前に会うことはなかったが、漏れ伝わる曾祖父の生涯の大まかな事柄だけでも、その異端ぶりを窺い知ることができる。

曾祖父は裕福な農家の次男として育った。年頃になって、交際していた女性との結婚を両親に認められず、二人で駆け落ちをした。一転して貧しい暮らしを強いられるものの、四人の子供をもうけた。男三人、女一人だった。しかし、末の子供が産まれて間もなく、妻を病気で亡くしてしまう。男手一つで子供たちを育て上げた後に、曾祖父は家を出て独りで山に籠もって暮らし始めた。

曾祖父は山を棲み家として暮らしながら石を探して歩くことが日課だったようで、時折山から降りてきて拾い集めた石を博物館や学校に寄贈していたと聞く。曾祖父が鉱物に関してどの程度の知識を持っていたかは分からないが、私は時折、世を捨ててまで曾祖父が山に籠もり石を拾い歩いていた理由を考えてみることがある。フェルディナン・シュバルのように躓いた石に啓示を受けて石に取り憑かれたのか、あるいは単に珍しい石を見つけて拾うことに喜びを感じていたのか。
いずれにせよ、石を拾い集めることは曾祖父にとって重要なことだったのだろうと思う。

曾祖父の最期は、人生の節目において唐突型の傾向が顕わな曾祖父らしく、山から降りて日本各地を旅している途中で、電車に轢かれ、その生涯を終えた。


那須悠介

 

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