2012.12.11 - 12.24
安掛正仁 Agake masahito
ダイダラ坊
35mm digital モノクロインクジェットプリント
A3ノビ 約23枚
あがけまさひと・略歴 >>
ダイダラボウ。
巨大な黒い影、各地に足跡を残してきた巨人。
この1年、ダイダラボウを見たという話を頻繁に耳にするようになった。
それも、東京のど真ん中で。オレは未だ見たことがなっかた。そんなオレを馬鹿にしているのか、マワリの奴らは形容しがたい眼差しを向ける。狛犬は石の硬い鳴き声でオレに向かって吠え、町の人たちは何か奇異なものでも見るかのような、恐れを含んだ眼で見る。
ダイダラボウを見ていないことが、そんなにおかしいことなのか!
オレは訳のわからぬままの毎日を過ごさねばならなかった。
そんなある日、ふと大きな黒い影が目の前に現れた。すぐ奴だとわっかた。
ダイダラボウ。
そいつはオレが歩くとピタリと離れずついてきて、オレがハテと頭をひねると真似をしやがった。
奴め、いつまでもついてくるのでいい加減、まいてやろうと一目散に走ってやった。でもどんなにもがいても、奴のことをまくことが出来なかった。
一瞬間、ハッとした。すべてが溶解した。
わかった、奴はオレだった。だから狛犬は吠え、町の人はあんな眼で見たのだ。
そうとわかったら、どんどん足跡を残していってやる。
オレはダイダラボウなんだから。
安掛正仁 |