2016.2.9 - 2.21
那須悠介 Nasu yusuke
緑の火
35mm モノクロ 16x20in. 23枚
なすゆうすけ・略歴 >>
この世のものすべてはふたつに分かれている。ひとつは目に見えるものであり、もうひとつは目に見えないもの。目に見えるものは目に見えないものの投影にすぎない。(「ゾーハル」第1章39節より)
ある角度からエメラルドに光を照射すると、緑色の透過光の中に複雑な反射が混ざり、炎のように見えることがある。
それに由来して、コロンビアではエメラルドのことをフエゴ・ベルデ(緑の火)と呼ぶ。
エメラルドが生成されるには、同一の地域で異なる火成活動が重なって起こり、真逆の性質を持った元素同士が混ざり合うことが条件となるが、その際に亀裂が生じて、気体、液体、個体のいずれかあるいは全てが石の中に入り込み、結晶化されることでエメラルドとなる。一見傷のように見えるこれらのインクルージョン(不純物)が緑の火を作り出すのに欠かせない要素となって、通過しようとする光の行手を阻んで角度を変えたり、微小な固体が光を遮って影絵のように投影されることになる。
エメラルドに光を照射することで現れる緑の火は目に見えるものだが、私が写真によって浮かび上がらせたいのは目に見えない緑の火と呼ぶべきものかも知れない。
那須悠介
|