燃えない写真

35mm　モノクロ　11×14in.　約24枚
はやしともな・略歴 >>

父が母の若い頃のアルバムを台所のシンクで燃やしていた事があります。
そのアルバムには、忘れられない恋人、楽しかったドライブ、誰にも渡したくない大切な思い出がつまっていました。

叫ぶ父と母。燃える写真。
その光景を眺める事しか出来なかった私。

私は人よりもちょっと過激な光景を見る事が多く、このエピソードもそのひとつです。
頭に猛烈に焼き付いている光景。
つらいなー。消したいなー。と思っていたけれど、実は居心地の良さや優越感を感じていました。
私こんな経験したんやで！
誰もそんな光景見た事ないやろ！すごいやろ！って。
そして何よりこんな光景をなぞるように写真を撮っていたので、大切にしてしまったんだと思います。

この展示をするにあたって当時の話を聞き出そうと「そういえば昔、パパお母さんのアルバム燃やした事あったよなあ。」と聞いてみると「え？そんな事あった？覚えてないわ。」って。
え？センチメンタルになりがちな私の気持ちって…。
まあ、そんな事忘れてる方がいいから良かった。っていうかもしかしたら全部私の妄想かも。私、妄想と現実ごちゃまぜになってる時あるからなあ。

私はこの場所で立ち止まっている場合ではないんです。
忘れても消えない記憶だし。
もう写真燃えへんし。

林朋奈