2019.3.26 - 4.7
上瀧由布子 Kotaki yuko
糸遊 GOSSAMER
35mm digital
モノクロインクジェットプリント 11×14in. 21枚
こうたきゆうこ・略歴 >>
いつも行くスーパーマーケットで買い物を済ませ、両手にレジ袋を提げて、駐車場まで歩くときに空を見上げると、なぜか急に鼻の奥がツンとして悲しくなってしまう。
どうしてなのだろうか。たいして大きくない駐車場なのに近くに高い建物がないせいか、空がとても大きく見えて、その中にポツンと独りだけで立っている状態は、別の自分がグーグルアースで地球全体からそこの場所までぐーっと引き寄せて、自分を俯瞰しているような、とても不思議な気分になるのである。
小さい頃から独りで行動するのは慣れていた。日曜日の午前中にピアノと歌のレッスンで散々怒られたあと、電車に乗って真っ直ぐに家に帰るのも悔しいから、地元の駅まで2駅分歩いて、途中で1時間くらい本屋に寄って漫画の立ち読みをして(かつては立ち読みも自由だった)、午後3時ごろ家に帰ったりしたこともあった。知らない道を勘を頼りに歩くのも楽しかったし、なによりレッスンで叱られた気落ちをリセットすることができた。
予定よりも遅すぎる帰宅に母に怒られたりはしたけれど、大切に守られているという気落ちを感じることができて、その頃は分かっていなかったけど、幸せだったのだ。
今、私は寂しい人なのだろうか……、いや、そんなことはない。ただ、頼りないほど柔らかい蜘蛛の糸が風に揺れているように不安定なだけなのだ。
上瀧由布子 |