2021.5.12 - 5.23
牟田義仁
Muta yoshihito
onbeat!4
35mm モノクロ 16×20in. 18枚
むたよしひと・略歴 >>
妻が某局朝のテレビドラマにハマっている。
私は、寝起きをテレビのあるリビングでするものだから必然的に付き合うことになるのだ。昨晩の少なくない量のアルコールがまだ気怠い身体に残って漂っているのを疎ましく思いながら、重く感じる頭の下にある枕を少し高くして横になったまま画面を眺める。が、つまらない。或いは私が不感症なのだろうか。
先日、ドラマが終わるとすぐ後の情報番組に主演の役者さんが出演されていて、作品についてや撮影秘話などをなんとも爽やかに話しておられた。興味深い話もありそれはそれで面白かったのだが、番組の最後の方で主題歌を歌ってらっしゃるというお方がスタジオで生演奏をされたのである。つらい。一曲で終わるのかと思っていたところ御丁寧に新曲までもご披露なさるというではないか。勘弁してほしい。イントロからAメロの頭まで聴いたところで怺えきれなくなり、毛布と布団を頭からかぶって身を縮めた。少しだけ死にたいと思った。暫くすると息苦しくなり耐えられず、恥ずかしいものだから妻に気付かれない様にそっと口と鼻先だけを外気に晒した。なかなか死ねないなと思った。妻はヘッドホーンに耳を当て静かにスピーカーのスイッチを切った。私はなんとも滑稽である。バレバレだ。
そろそろ最終回を迎えるらしい。次のクールの作品が妻の嗜好と遠く掛け離れていることを切に願う。
不感症。
ひょっとして誂えものが苦手なのかも知れない。
写真はというと、眼前のモノに当たる光とそれで出来た影を、光学、フィルム、紙にケミカルといったものの装置性の範疇であれば、ただただ複写してくれる。表現として最もエキサイティングなメディアだと思うのだが、果たしてどうであろうか。
牟田義仁 |