影を撮む

35mm　カラー　タイプCプリント　16×20in.　20枚
みやざわつよし・略歴 >>

セッティングについて

何でもそうだろうが物事を始める前の準備、セッティング、というものがある。

暗室にもある。
無論暗室で引き伸ばしや現像作業をするので、それに必要な物を準備したり、不要な物を片付けたり、掃除したりから始める。

あらかた綺麗にして裏のドアを開けると階段で母屋の二階に上がれるようになっているのだが、ふと見ると階段の床面がくすんで汚れている。ここも拭いておこう。拭き始めると意外に汚れているので水で薄めたアルコールと激落ちくんなどで入念に拭き上げて行く。2階の床面まで17段あった。

それから三匹の猫それぞれに挨拶をする。撫でたり膝に乗っていただいたり嗅がせていただいたりする。

飯は食わないと死んでしまうので最低限食うわけだが、ガスレンジの汚れが酷いのが気になってしまう。前回は換気扇が気になって外して徹底的に洗った。その時に買った「油職人」と言う洗剤がまだあったのでそれでゴシゴシと洗う。強い洗剤なので手指がガサガサに荒れてしまった。尿素入りのハンドクリームなどを塗りたくりたいが、ネガや印画紙を触るので我慢する。

食べて運動したので生理現象が仕方なく起こってくる。我が家のトイレには常に読み差しの本が何冊か置いてあって、何故かこんな時ばかりそれらを捗々しく読み進められてしまい、なかなかトイレから出ていけない。

やっと暗室に戻るが、俄然外の空気が吸いたくなり、出ると、娘が壊れていると言っていた自転車が目について、やおら修繕を始めてしまう…。

かくて10日ほど前から暗室の準備を始めていたはずが、日一日と残り少なくなって行き、気付けば数日後に搬入となってから初めてお尻に火が付くのだった…。

宮沢豪