2021.11.16 - 11.28
梁丞佑 Yang seungwoo
だるまさんが転んだ
35mm モノクロ 11×14in. 28枚
やんすんうー・略歴 >>
神奈川県横浜市寿町。
横浜中華街から徒歩10分ほど歩いた所に存在する。 最初は話に聞いて何の気無しに訪れた。
いろんな国の言葉が聴こえ、さらに私が思っている日本像とはあまりに違う街 の様子に「ここは日本ではない。」と感じた。
そして、この街を撮りたいと強く思った。 そしてこの街に通いつめるわけだが、しばらくはこの街を『ただ、見ていた』 隠し撮りをするという方法もあったのだが、それではなんだか気がとがめ、彼 らと交わりたいと思った。
そしてとりあえず、道に座って酒を飲んでみた。 彼らは私が煙草の吸殻を灰皿に捨てたら「変な奴だ。」と言った。言葉も乱 暴。しかし「分け合う」ことを知っていた。生活は貧しくても心は豊かである ように感じた。
そうして彼らと過ごす事3ヶ月。
やっと、私に1人が聞いた。
「お前は何をやっている人間なんだ」と。 仕事もせずに日がな一日道に座っている事を、やっと奇妙に思ってくれたの だ。
満を持して私は言った。 「写真しています。」と。そこから私の撮影が始まった。
ぎりぎりで、這いつくばるような、そうかと思えば、すでに全てを超え浮遊し ているような、 悲しさや寂しさ辛さとともに、幸せも楽しみも、悪意も善意も。手に取るよう に感じられた。
「人が生きるということは...」 そう問われているように感じた。
ある日、コインランドリーの入り口で雨宿りをしていた一人の中年男性がい た。血だらけだった。 「どうしたの?」と聞いたら、その男性は私の目を見て、「だるまさんが転 んだ...。」とだけ繰り返した。温かいお茶を差し出したら、「ありがとう。」 と言って、ただ握っていた。
私がいるときには、飲まなかった。 日本には『だるまさんが転んだ』という遊びがある。 鬼が「だるまさんが転んだ」といって振り返ると、鬼に向かって近づいて来て いた人達は、動きを止める。もし動いている事がばれると、自分もまた鬼にな る。
オレに構うな。
「だるまさんがころんだ」 もしかするとそういう事だったのかもしれないと今になって思う。
現在、寿町は他のドヤ街と同じく以前の姿は消え、高齢化が進み、街の『境界』 は曖昧になり他の街となじみつつある。
横浜市寿町(2002〜2017) 梁丞佑 |