2022.10.18 - 10.30
安掛正仁 Agake masahito
朧眼風土記 -ヨウネント少年ノアヒダ-
35mm digital
モノクロインクジェットプリント A3ノビ 21枚
あがけまさひと・略歴 >>
すこしふくらみのある茶封筒がとどいた。
最近、何かを書き残す時に鉛筆を使ふ。
そして、使う前には、せつかく鋭く削つた先を、落書きなどして、円くなつた芯で書く。
円くなつて、やはらかい線で残す言葉のほうが、優しく豊かな気がするからだ。
思ひ、考へを書き残すには、円くなつた鉛筆がよろしい。
確か小学生の頃だから、もう四十年以上前の話しになるが、家に何本かの補助軸があつた。鉛筆が短くなつて使ひにくくなつたときに付け足して延長し使ひやすくする道具。
今でもあるクローム鍍金された綺麗な補助軸の中に、一本だけその時分でもだいぶん年を経てきたであらう茶色く、くすんだ軸があつた。少年に古くさい道具など目に入ることなもなく、いつしか放つて無くしてしまつた。
最近、鉛筆を使ふやうになつて、補助軸を探してみると鍍金された綺麗な補助軸ばかり。
わたしはといふと、なぜか茶色く、くすんだ補助軸の姿が眼に浮かび、使いたくて仕方がない。
結果、かの軸はもはや製造されていないことを知る。それでも何とか手にしたい。
なぜ、こだわるのか。
それは、きつと、小学生の頃に、どこかに放つて無くしてしまつた、その頃の想ひを重ねているのだらう。
そして、再び手に出来たとき、きつと無くしてしまつた心の一部を取り戻す事が出来るのではないかといふ思ひからなのだらう。
そして、いま、目の前にある茶封筒には補助軸が入つてゐる。
さて、写真についてであるが。。。
安掛正仁 令和四年十月 |