2023.3.14 - 3.26
篠田優 Shinoda yu
松代・風景
6×6判 カラー、モノクロ
インクジェットプリント 180×180mm 24点、
380×380mm 2点、485×485mm 2点
しのだゆう・略歴 >>
日の光は刻一刻とかわっていく。植物は気づかないあいだに伸びて、枯れる。水はぬるむ。そしていつのまにか、薄氷の下に泥を閉じこめている。
この土地を覆う緑色には多くの、おそらく無数といっていい、バリエーションがあることを、わたしは写真を撮り繋ぐなかで学んでいった。光と風を透過するような色、そのうちに黄をはらんだ緑、冷たいシアンに濡れて夜の閾で揺れていた、緑の色。おそらく写真にうつる「瞬間」とは、そうした色たちの反映なのだ。
松代には、ひとによって穴を穿たれた山が並んでいる。季節にかかわらず、暗闇を充たす空気の熱はあまりかわらない。それでも夏には岩肌が汗ばむように濡れている。岩は硬い。それ故に、そこに存在した身体の痕をいまにいたるまで保っている。まるで碑と、そこに刻まれた文のように。のこされていたひと、とどまっていたひと、つれてこられたひとたちの、痕を。
しかし、やわらかな草の葉と同じように、やがて岩も朽ちるだろう。いましばらく、その姿をみていたい。だから、わたしは写真を撮るのかもしれない。そして、その姿を、だれかにもみていてほしいのだと、思う。
篠田優
篠田優 × 林朋奈『循環』 2,000円
サイズ:縦210横125mm
写真:01-16項49-61項_篠田優/松代・風景
17-48項_林朋奈/JOY !
アートディレクション&デザイン:山田洋一
翻訳:高島友希乃
用紙 カバー:純白ロール38.5KG
表1、4:ファンタス ホワイト200KG/
本文:ミューコートネオス90KG
印刷:三永印刷株式会社
(C)2023年 篠田優/林朋奈
日本 東京
この度、メンバーの林朋奈企画による展覧会、篠田優写真展「松代・風景」を開催いたします。
篠田優は東京を中心として、展覧会の開催や作品集の出版など、着実に経験をかさねている写真家です。
本展覧会には長野県の松代に取材した写真群が出陳されます。篠田は同地を2017年から現在にいたるまで撮影していますが、そのモチーフは、田畑にみのる作物や農具を収納するための小屋から、太平洋戦争末期に建設された大規模陣地の内部にのこる掘削痕まで、様々です。場所や状況によってカラーとB/Wが使い分けられたそれらの写真映像は、四季折々に土地の諸相を断片的なかたちで切り取った、その結果であるといえます。
同時に、そうした一枚一枚を展覧会や書籍において撚り合わせることで篠田は、松代という地に層を成して存在する様々な時の流れを視覚化しようと試みているようです。
本展覧会に際しては林朋奈と共著で写真冊子『循環』を発刊し、販売いたします。この機会に是非ご高覧ください。
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