2023.10.3 - 10.15
浜田泰介 Hamada taisuke
polkadot
35mm digital
カラーインクジェットプリント 20×24in. 20枚
はまだたいすけ・略歴 >>
「やっぱりプロは凄いですね!」
撮影の仕事で、モデルやタレントといったプロではない一般の人を撮影する時、こう言っていただくことがある。
自分自身の持つイメージとは違い、良く写っている自分の写真を見て、そういう言葉が出るのだと思う。
こちらとしては特別なことをしている意識もないので返答に困ってしまうのだが、そんな時は決まって「押せば写りますから!」と冗談めかして答えている。
しかしながら、このセリフは僕の本心に近い。
十数年前、僕はギャル雑誌のカメラマンをしていた。
集合時間に遅れるのは当たり前で、いつも機嫌が悪く、「お腹空いた〜コンビニでおでん買って〜」とおねだりしたものを一口食べるや、「まずい〜あげる〜」と使いパシリにした担当編集者に返してしまうような、その見た目とは裏腹に全く可愛げのないAちゃんというモデルがいた。
Aちゃんは撮影スタッフからの印象は非常に悪かったが、それに反して雑誌の人気投票では常に1位の看板モデルだった。
雑誌の読者は不機嫌で我儘なAちゃんではなく、誌面に掲載された写真の彼女しか知らない。
それはおそらく、彼女が写真になる時、撮影者の(主にマイナスの)気持ちや想いが削ぎ落とされ、彼女に秘められた魅力が写し出されるからだろう。
その人が良く撮れているということは、その人自身が秘めたものを発揮した結果なんだと思う。
撮影者の腕がどんなに卓越したものであっても、それは被写体の中にある何かを引き出す行為に他ならない。
「押せば写りますから!」というセリフに、僕はそういう意味を込めている。
人に限らず、物や光景、出来事にも、何かが秘められていると感じることがある。
「polkadot」の撮影をしている時、僕はそういう何かを秘めたモノを探しているのだと思う。
そういうモノはあちらこちらに点々としていて、どこにあるかはわからないし、ぼんやりしていると見過ごしてしまう。
点々とある何かを秘めたモノと出会うには、目を凝らしながら、とにかく脚を使って探すしかない。
カメラを向けてシャッターを切る時、「秘められた何かが一緒に写りますように」と祈るような気持ちになる。
そんな僕の気持ちは削ぎ落とされて、カメラは至極冷静にレンズの前にあるモノを写真にする。
秘められた何かが写っているかどうかは、撮影したその時はまだわからない。
写真をプリントにし、一枚一枚の声を聞くようにじっくりと向き合う。
これだ!と思うことがあっても、それは僕の思い込みかもしれない。
確信めいたものなど何もない。
僕は結局何もわからないまま、こうして写真を撮っている。
ただ、撮影した点々とあったモノの写真を並べた時、そこに何かがあることを僕は信じたい。
この写真達が僕の手を離れて、他の誰かに何かを語るなら、それで充分なのだと思える。
そうであって欲しい、と祈るようなこの気持ちが、少しでも何かの実を結ぶことを、僕は願っている。
浜田泰介 |