2024.2.13 - 2.25
マット・ウォング Matt Wong
タイムマシン ランダム
35mm モノクロ
ゼラチンシルバープリント 11×14in. 23枚
マット・ウォング・略歴 >>
この間、コーマック・マッカーシーの記事「ケクレ問題」を読んで印象に残った。題名は、化学者のアウグスト・ケクレへを指している。有名な話だが、彼はベンゼンの構造を解くために苦労していて、ある夜自分の尻尾を食べているヘビの夢を見た。その画像がきっかけとなり、ベンゼンは環状構造だと思いついた。マッカーシーが「問題」と呼ぶのは、なぜケクレの脳裏は直接本人に「ベンゼンは環状構造だ」という言葉を教えてくれることよりも、妙なヘビの夢を見せたか、と言うこと。結論を言ってしまえば、目で見るものという情報を「意識する」脳裏は200万年かけて進化してきたが、言葉は比較的に若い(わずかの10万年)ため、脳裏ははるかに言葉よりも、夢で出る画像を処理した方が得意ではないか、とマッカーシーは言う。ふーん、まさに写真のことと同じじゃないか。蛇の夢は「ベンゼンは環状構造だ」という当時まで存在しなかった新しいアイデアを挑発した。そして面白い写真は(中平さんの言い方を借りると)今までなかった言葉を画像で挑発する。
また、夢の心理学的な役割は何だろう。分からないけど、当日見たもの、経験したリアリテイを解釈するための裏側の処理と言われている。その点も写真と同様。
と考えても、あまり何も役に立たない話だけど、その意味だけで写真は意外と夢と共通点があるな、と少し思った。
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