2023.7.18 - 7.30
浜田泰介 Hamada taisuke
polkadot
35mm digital
カラーインクジェットプリント 20×24in. 20枚
はまだたいすけ・略歴 >>
2023年、5月末。
ゴールデン街からの帰りの道、真っ赤な髪に、真っ赤なスカジャンを纏った青年が目に飛び込んで来た。
彼は自分の歌だけを歌い、路上ライブの投げ銭だけで生活しているという。
何枚か写真を撮らせてもらった。
「最近は警察の取り締まりが厳しくて、今日は2時間でまだ1曲しか歌ってないんですよ」
後日、路上で再会した彼はやるせなさを滲ませた顔で、こう言った。
これから少し場所を変え、路上ライブを再開すると言う。
大通りを反対側に渡り、慣れた手つきで手際良く機材をセッティングしたところで、彼の路上ライブが始まった。
僕より二回りも若い彼の歌う姿は、力強い声と、迷いを感じさせない堂々とした立ち居振る舞いがとても魅力的で、強固な意志を感じさせるものだった。
この大通りには「路上ライブ禁止」と大きな文字で書かれた垂れ幕が掲げられている。
禁止であっても、歌うことを止められても、少しでも多くの人に自分の歌を聞いてもらいたい、その先で何かを手にしたい。
彼の覚悟を想像しながら、僕は彼の歌う姿に釘付けになった。
3曲目に差し掛かったところでふと周りを見ると、どこからやってきたのか、警官が一人、歌う彼のことを無言のまま、ただ見つめている。
「止められちゃったので終わりにします」
3曲目を歌い終えたところで、彼はこう言って短いライブを終えた。
その警官は小さく会釈をすると、彼に声をかけるでもなく、静かにその場を後にした。
阿吽の呼吸のようなその一連の流れに、僕は少し面食らった。
「あの人に止められるのは今日2回目で。(何度も始末書を書いているうちに)もう自分の住所を暗記しちゃったって言ってましたよ」
憤りでもやるせなさでもない、複雑な表情をしながら、彼はこう言って少しだけ笑って見せた。
「でも、優しいですよね」
呟くように、彼はぽつりとそう言った。
ーーーーーー
大きいでもなく、小さいでもなく、交わることもないが、決して遠くはない、点と点。
polkadotとはそのような水玉模様のことである。
バラバラな点として寄り集められた写真群の間には、まだ言葉に出来ていないが、そこにはきっと何かがある、僕はそう感じる。
それが何かは、いつか写真が教えてくれるだろう。
前回の展示に寄せたステートメントを要約すると、僕はこのようなことを記した。
そこに何があるのかは、今もまだ言葉にできてはいない。
ただ、あの時より少しだけ、ほんの少しだけは、それが何かをわかってきたような気がしている。
この文章を何度も書き直しながら、火照った頭で寝付けない時間、polkadotとは何かを考える。
ああ、そうか。
僕は点ばかりを見ていたが、水玉模様は点だけでは成立しない。
その背景、点と点との間には、必ず地の部分が存在している。
一つ一つの点の余白のように、それらの点を繋ぎ止める地が、最初から存在していたのだ。
浜田泰介 |