2023.8.1 - 8.13
宮沢豪 Miyazawa tsuyoshi
影を撮む
35mm、35mmパノラマ、6×7判
カラー タイプCプリント 16×20in. 20枚
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書く事が無いので、水潜りの事から書き始めましょうか。夏だし。
僕が好きなのはいわゆるスキューバダイビングでは無くて、素潜りで海の磯の貝などを探す方の水潜りです。
潮が引いていると、膝下ぐらいの浅い場所で運良くサザエやトコブシが拾えたりもしますが、たいていの場合、最低でも二、三メートルは潜らないと獲物にはありつけません。
浮いては潜り、潜っては浮きの繰り返しで、貝の居そうな岩の隙間を虱潰しに探して行きます。
最初の10数分は、波に揺られて立ち泳ぎするのにも難儀して、すぐに岩の上にあがって息を整えないとしんどいんですが、段々順応してくると、オカに上がらずともずっと波の上に居られるようになります。
息が整うと長い時間潜れるようになるので、さっきまで何度潜っても見つけられなかったサザエが目に入って来ます。こうなるとしめたもので、闇雲に海底まで潜らずとも、海面の方から貝の背中を判別出来る程に次第に目が慣れて、一回の潜水で2個3個と拾えるようになって来ます。
この時、周囲に注意を向けてみますと、今まで聞こえなかった遠くの浜のざわめきが耳に入って来たり、青い空を仰げば、トンビがくるりと頭上を回っているのが見えたりします。感覚が拡張されているんですね。
こんなような事が撮影の時にもある、と良いんですが無いんですよねえ、残念ながら。ダメな時はダメだし、気分のいい時は気分よく撮影できる。ただそれだけ。いくら息を止めて頑張っても、それでよく写ったってことは今まで一ぺんだってありませんでした。
ただし、ネガ現終えてベタ取って、暗室作業の為に1週間ほど篭っていると少し様相が変わってきます。
暗室に長時間「潜る」と、ある時突然謎の感覚が生まれて、「このネガをこう焼くと跳ねる」みたいな閃きがどこからともなくやって来るんですよねえ。不思議ですね。ただの睡眠不足から来る幻覚かな?皆さんはどうですか?
2023年 盛夏 宮沢 豪 |